カンナビの井戸(cannabinoid)

鎮痛薬を求めて合成「シンセ」CBD

鎮痛薬を求めて合成「シンセ」CBD

こんにちは、 CBD情報局「カンナビの井戸」のカンナビです。

先週末、アメリカのCBD関連のニュース記事をいろいろ眺めていたら、医療用の合成CBDに関する記事を見つけました。

合成CBDというのは、植物である大麻草からではなく化学合成で作られるCBD。

とてもマイナーでローカルなメディアの記事ですが、今日はそれについて少し書きます。

鎮痛(薬)を求めて合成CBD利用へ

「鎮痛(薬)を求めて合成CBD」

この記事は、東海岸南部ノースカロライナ州にあるウィルミントンという市の地元ビジネス系オンラインメディアに掲載されていたもの。
Tapping Synthetic CBD For Pain Relief (WilmingtonBiz)

「母をたずねて三千里」ならぬ、「鎮痛(薬)を求めて合成CBD」というような趣きのタイトルです。

これは地元の起業家や企業を紹介する「Entrepreneurs (アントレプレナーズ)」というシリーズの記事で、ザッと要約すると…

この5月、地元の Isosceles Pharmaceuticals という製薬ベンチャーが、ノースカロライナ州(略称『NC』)で初開催されたバイオテック系ベンチャー支援コンテスト「NC BIONEER ベンチャーチャレンジ」で入賞。
その事業の柱は、いわゆる「非オピオイド」鎮痛薬の開発、その中でも合成CBDを主成分とする鎮痛薬の開発に取り組んでいる…

…という感じです。

ちょっと端折り過ぎたかもしれませんが、インタビューの中で社長さんがこんなコメントをしています。

当社のCBDはラボで化学合成されるもので、ヘンプ(産業用大麻)由来ではありません。
たとえばアスピリンはもともと柳の木の樹皮から作られましたが、今ではアスピリンを作るために柳を栽培することはありません
農産物には不純物が多すぎるため、FDAはそのような製法による医薬品を承認しません。
だから合成する必要があるのです。

ちなみにアメリカで唯一のFDAお墨付きのCBD処方薬であるエピディオレックスの場合、CBDは合成されたものではなく大麻草由来。

ただ、その大麻草栽培も薬品製造も今のところイギリス国内でおこなわれ、アメリカでは輸入販売されています。

アメリカは何かと大雑把でオープンな印象もありますが、CBDに関するFDAの姿勢も含め、実はとても細かく慎重で、ある意味クローズド、閉鎖的です。

ただ、臭いものにフタをしないという意味ではオープンです。

科学や論理を重んじる国なので、「それは本当に『臭いもの』なのか」「なぜ『臭い』のか」「フタをせずにどう対応すべきか」などを追求し続けるカルチャーがあります。

一方、日本はというと、臭いものにフタをすれば、あるいは重要書類でもシュレッダーにかけてしまえば、「無かったこと」にできるという文化や慣習が今も強く残っています。

CBDや大麻を巡る問題もそれに沿う形で扱われていますが、果たしてそれがいつまで続くのか…

いわば「シンセCBD」

さて、話が脱線してしまいましたが、化学的に合成されたCBDは通常、英語で「synthetic CBD (合成CBD)」または「synthesized CBD (合成されたCBD)」と呼ばれます。

そう、電子楽器の「シンセサイザー」や「シンセ」とは異母兄弟(?)のような関係にある言葉です。

これに対して、大麻草由来のCBDは「hemp-derived CBD (ヘンプ由来のCBD)」や「natural CBD (天然CBD)」、あるいは「non-synthetic CBD (非合成CBD)」などと呼ばれています。

大麻草に100種類以上含まれるカンナビの井戸…ならぬカンナビノイド。

その中では、精神作用のあるTHCと精神作用のないCBDが二大巨頭と呼ぶべき成分です。

これらも含めた数種類のカンナビノイドの中には化学合成で作られるものもあり、それらは「合成カンナビノイド」と総称されます。

ただ残念なことに、合成カンナビノイドには大麻草に存在しない新種(?)のカンナビノイド「もどき」も含まれ、その多くはいわゆるゆる「危険ドラッグ」。

悪名高い違法薬物が多いため、合成カンナビノイド全体が悪者扱いされがちですが、海外では抗がん剤治療に伴う吐き気止めのドロナビノール(マリノール)やエイズ患者の食欲不振や体重減少に使われるナビロン(セサメット)など、合成THCが使われている承認薬もあります。

そういえば、前回も少し触れましたが、この4月、厚生労働省が公表したCBD製品輸入に関する説明文書について、前編・後編の2回に分けて解説しました。

その厚労省の文書の最後のページでは、輸入しようとする製品が「大麻草から作られていない」CBD製品、つまり化学合成で作られたCBDを含む製品の場合の必要書類が記載されていました。

【徹底解説】「CBDオイル等のCBD製品の輸入を検討されている方へ」(厚生労働省)【前編】

植物由来から合成へ…?

違法な麻薬として出回る合成カンナビノイドは比較的安価に作られるものが多いと言われていますが、医薬品に使われる合成カンナビノイドの場合、医薬品としての品質維持が重要ということもありコストがかなりかかるようです。

それでも大麻草からカンナビノイドを抽出する場合の純度の問題などから、欧米の医療大麻先進国の医薬品メーカーの中にはカンナビノイド合成による医薬品の研究開発を積極的に進めている会社もあります。

ところで先ほどの社長さんのコメントの中には柳の樹皮から抗炎症・鎮痛薬のアスピリンが生まれた話がありました。

その話は記事の原文でもかなり端折られていましたが、中外製薬の以下のウェブページにはこのアスピリンやモルヒネなど、植物由来の鎮痛薬の話が掲載されています。

●「近代のくすり創り」(中外製薬)

大麻草やカンナビノイドには今後どのような展開が待っているのでしょうか…

オピオイド危機と医療用大麻

もう一つ、先ほどの会社紹介では「非オピオイド」鎮痛薬の開発と書きました。

「オピオイド」というのは人間の中枢神経や末梢神経にあるオピオイド受容体に作用する麻薬性鎮痛薬で、医療用麻薬とも呼ばれます。

がんによる痛みの治療には医療用麻薬が使われることがあるのですが、「WHO方式」と呼ばれる治療法では、軽度の痛みの場合はまず「非オピオイド」鎮痛薬を使い、それでは十分な鎮痛効果が得られない場合にオピオイ ド鎮痛薬を使用することになっています。

このオピオイド、日本ではほとんど報道されませんが、アメリカでは医師による過剰処方に伴う健康被害が大きな社会問題となっています。

ご参考まで、以下のウェブページには、医学的な情報とともにその背景などがうまく整理されています。

●「オピオイドクライシスを正しく理解する」(日本緩和医療学会)

ちなみにアメリカでの医療用大麻への期待やCBD製品の盛り上がりにはこのオピオイド危機も影響しています。

また、話は少し脱線しますが、この記事内の「日米の薬物依存の違い」という段落は興味深いので引用します。

【日米の薬物依存の違い】
古くから米国ではオピオイドを中心としたダウナー系薬物が乱用に好まれる傾向にあるのに対して、わが国では覚せい剤を中心としたアッパー系薬物が乱用に好まれる傾向にある。
この背景には、単に遺伝的要因では説明できず、文化、社会構造、教育システムなどが複雑に絡んでいる。

ちなみに「ダウナー系」は言うなれば「気分を落ち着かせる系」です。

この記事ではオピオイド危機に至った社会背景にはあまり触れていませんが、2003年に発生したいわゆる「9.11」アメリカ同時多発テロののち、アメリカはアフガニスタンとイラクでの戦争が本格化したことで傷病兵や後遺症を抱える退役軍人が急増しました。

退役軍人省や退役軍人の治療に関わる多くの医師が、オピオイド鎮痛薬の使用を奨励したり乱用ならぬ乱処方したことで、その後、オピオイド依存症に苦しむ患者や過剰処方で死亡する患者が増えるなどの問題が深刻化したという背景があります。

常に死の恐怖に直面する状況に置かれた現役軍人や怪我の後遺症やトラウマに悩まされ続ける退役軍人たち。

彼らがダウナー系薬物を乱用してしまうという社会事情は、平和な日本ではなかなか想像できないことかもしれません。

ちなみにこのカンナビが中学生になった頃はまだベトナム戦争が泥沼状態で続いていました。

当時高校生だった兄から「このままいくと俺たちも徴兵されるぞ」と言われて子供心にとても怖くなったことを思い出します。

薬物乱用に至るパターンは国や文化を問わずいろいろありますが、アメリカの場合、世界のどこかで戦争に関わっていない時期の方が少ないという国。

そしてその間も、本国では人々がそれなりに平和で豊かな日常生活を送っているというギャップが帰還兵を待ち受けています。

人種問題や貧困問題などのほかにもこんな特殊事情がある国だけに、依存性の高い薬物で溢れる現状を考える度に複雑な思いが頭を巡ります。

さて、少し暗い話になってしまいましたが、最後は明るい(?)話題で締めたいと思います。

冒頭で触れた、ノースカロライナ州のバイオテック系ベンチャー支援コンテスト「NC BIONEER ベンチャーチャレンジ」という起業コンテスト。

この「BIONEER 」というのは「バイオ」と先駆者・開拓者を意味する「パイオニア(PIONEER)」にかけたダジャレです。

ダジャレ好きなカンナビ的には、それもこの記事を紹介したくなった理由の一つです。

日本でもCBD業界のBIONEER登場に期待しましょう。

では、また!

アメリカのFDAが公表したCBDの安全性に関する見解の波紋