カンナビの井戸(cannabinoid)

厚労省『麻薬・覚醒剤乱用防止運動』への提言!…というかツッコミ

  • 2020.09.26
  • 更新日:2020.12.10
  • 国内
厚労省『麻薬・覚醒剤乱用防止運動』への提言!…というかツッコミ

こんにちは、 CBD情報局『カンナビの井戸』のカンナビです。

2ヶ月ほど前の7月下旬、『誘われたら誘い返す、倍返しだ!…はイケませんが…』という記事で、厚生労働省が毎年10月1日から11月30日まで実施する『麻薬・覚醒剤乱用防止運動』という啓発キャンペーンについて書きました。

厚労省の啓発資料に記載されていた、違法薬物の取引で使われる隠語という下世話な話がメインの記事で、もう一つのトピックが、昨年度のキャンペーンポスターを見るたびになぜかTBS日曜劇場『半沢直樹』を連想するという話。

当時はまだ今年度のポスターが公開されていませんでしたが、厚労省は数日前、今年度のキャンペーン実施要項とともにポスターを公開しました。

今日はそれを少し料理したいと思います。

ポイントとしては、ひと続きの文章仕立てにした以下の目次の通りです。

誘われたら誘い返す、倍返しだ!…はイケませんが…

『麻薬・覚醒剤乱用防止運動』の内容はショボいのに…

ということで、今年度のポスターは冒頭のテーマ画像の右側にある通り、メインが実写の人物シルエットではなく、シルエット状の頭部イラスト。

その周囲に、『大麻』『コカイン』『覚醒剤』『MDMA』『シンナー』『危険ドラッグ』といった違法薬物の名称が漂っています。

そして、実施要項に記載されている啓発運動の趣旨はこんな感じです。

 麻薬、覚醒剤、大麻、危険ドラッグ等の薬物の乱用は、乱用者個人の健康上の問題にとどまらず、さまざまな事件や事故の原因になるなど、公共の福祉に計り知れない危害をもたらします。一度でも薬物に手を出さない・出させないことは極めて重要であり、国民一人ひとりの理解と協力が欠かせません。

 この「麻薬・覚醒剤乱用防止運動」は、薬物の危険性・有害性をより多くの国民に知っていただき、一人ひとりが薬物乱用に対する意識を高めることにより、薬物乱用の根絶を図ることが目的です。

出典:厚生労働省「麻薬・覚醒剤乱用防止運動の実施について」(令和2年度)

冒頭の『麻薬、覚醒剤、大麻、危険ドラッグ等の薬物』は、サラリと読み流してしまいがちですが、補足すると、ここで例として挙げられている『麻薬、覚醒剤、大麻、危険ドラッグ』はいずれも『違法な』薬物の代表例です。

一応、『等』を添えてありますが、この啓発運動の名称に『麻薬・覚醒剤乱用防止運動』とある通り、ここでの『等』は基本的に『その他の違法薬物』。

後述する『合法薬物』は除外されています。

ちなみに、ホームセンターなどで気軽に買うことができるシンナーなどのいわゆる有機溶剤そのものは違法な物質ではありませんが、その乱用(摂取・吸引)や、乱用目的での所持は懲役刑も可能な犯罪のため違法薬物として扱われています。

さて、今年度はコロナ禍の影響により、主催者である厚労省と各都道府県が例年行うイベント類は基本的に行わないとのこと。

「麻薬・覚醒剤乱用防止運動」の概要

・実施期間 令和2年10月1日(木)から11月30日(月)までの2か月間
・実施機関 主 催:厚生労働省、都道府県
      後 援:公益財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センター
      協 賛:内閣府、警察庁、法務省、最高検察庁、財務省税関、文部科学省、海上保安庁
・主な活動 例年実施している麻薬・覚醒剤乱用防止運動地区大会は、今年度は新型コロナウイルスの影響により集会を伴うものは行わず、地域の実情に配慮した上で下記活動を実施します。
      正しい知識を普及するためのポスター、パンフレット等の作成・掲示
      麻薬・覚醒剤乱用防止功労者の表彰

出典:(同上)

…となると、今年は啓発イベント類が開催されないだけに、啓発運動における『ポスター、パンフレット等』の比重というか、情報としての重要性は相対的に増すことになります

ちなみに厚労省は現時点ではまだ今年度のパンフレットを公開していませんが、前述の記事でリンクしていた昨年度のパンフレットはひと足先に公式ウェブサイトから削除されました。

厚労省ウォッチャーのカンナビはもちろん、昨年度のパンフレットPDFも保存しているので、今年度版の内容で何かネタになるような(?)変化があれば改めてこのブログで書きます。

…大麻のウェイトは重い。

さて、先ほどの主な違法薬物に、主な合法薬物も加え、どのような法律で規制されているかを列挙するとこのようになります。

 大麻:  大麻取締法
 覚醒剤: 覚醒剤取締法
 コカイン、ヘロイン、LSD、MDMA/MDA:
      麻薬及び向精神薬取締法(麻向法)
 あへん: あへん法
 危険ドラッグ: 薬品医療機器等法(※)
 シンナー(ほか有機溶剤): 毒物及び劇物取締法
 アルコール: 未成年者飲酒禁止法
 タバコ(ニコチン) : 未成年者喫煙禁止法
 医薬品全般 : 薬品医療機器等法(※) ※『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律』(薬機法)

前述の通り、今回の啓発キャンペーンのテーマは、その名の通り『麻薬や覚せい剤(など)』という違法薬物。

その目的は、改めて引用しますが『危険性・有害性をより多くの国民に知っていただき、一人ひとりが薬物乱用に対する意識を高めることにより、薬物乱用の根絶を図ること』。

ちなみに厚労省はアルコールやタバコ、医薬品といった合法薬物の乱用に関しては、これとは別の啓発活動や情報発信を展開していますが、いかんせん合法薬物ということに加え、酒類とタバコの製造・販売事業は財務省の管轄

今年度のアルコールの酒税とタバコの『たばこ税』を合わせると国税収入の3.5%超ということで、厚労省としてはその乱用の根絶どころか、危険性・有害性に関する情報発信であっても財務省の尾を踏まぬよう何かと配慮する必要があります。

それに比べると、この違法薬物キャンペーンの方は厚労省ものびのびと(?)活動を展開している印象ですが、その対象薬物はこの通り…

厚労省『麻薬・覚醒剤乱用防止運動』ポスター

…写真と解説付きの大分類としては『大麻』『覚醒剤』『麻薬』の3種類。

その下には『違法薬物に関する情報提供は』という囲み付きで『あやしいヤクブツ連絡ネット』の連絡先。

え?

趣意説明にある通り『危険性・有害性』の啓発が主目的なら、『情報提供』よりもまず『相談』と書くべきじゃないの?!

普通に見た人は、これは相談窓口ではなく通報窓口と解釈するはず…

それもある意味当然といえば当然で、そもそもこの窓口の名称の主体はヒトではなく『あやしいヤクブツ』というモノ。

危険性や有害性について悩んだり懸念したりする使用者本人やその周囲の人たちのための相談窓口というよりは、『あやしいヤクブツ』を通報するための窓口という印象を与えますが、これは恐らく意図されたことなのでしょう。

ちなみに、この『あやしいヤクブツ連絡ネット』というサイトを訪れてみると、連絡先ページにはメインのコールセンターの電話番号とは別に、各都道府県の医務薬務課や精神保健福祉センターの電話番号がズラリと列挙。

一応、通報だけではなく相談の窓口だと言える建て付けにはなっています。

さて、写真と解説付きの『大麻』『覚醒剤』『麻薬』の話に戻りますが、これは恐らく先ほど列挙した各種薬物を規制する個別の法律との兼ね合いも踏まえ、代表的なものとしてこれら3種を並べているようです。

まず左端の大麻についてはこの通り…

厚労省『麻薬・覚醒剤乱用防止運動』ポスター

…『決して安全とは言えない』と控えめ。

昨今のグローバルな行政トレンドや医学的なエビデンスも考慮すると、さすがに強気のプロパガンダ一辺倒というのも逆効果と考えたのでしょうか。

『でも安全じゃないんだからね!』という捨てゼリフのような響きもあります。

一方、覚せい剤と『その他大勢』の麻薬については、その危険性や有害性の高さがそれなりに伝わるような内容になっています。

厚労省『麻薬・覚醒剤乱用防止運動』ポスター

ただ、『見た目』のバランスも含め、大麻をこれらと同列で扱うことにはやはり違和感を感じます。

もちろん、近年は特に若年層の大麻事犯が増加傾向にあることを受けて、健康面での危険性や有害性とは別の判断軸でキャンペーン上のウェイトバランスを考える必要があることは理解できますが、問題なのはもっと根本的な認識や情報発信のスタンス。

このキャンペーンに限らず施策や行政全般が肝心の危険性・有害性よりもシロ・クロの違法性の方に意識が向きすぎているのではないでしょうか。

ちなみに大麻の危険性・有害性の低さを認めた場合でも、いわゆる『ゲートウェイドラッグ』としての危険性がよく議論になります。

大麻のようなマイルドな薬物が、より危険性・有害性の高い薬物使用へのゲートウェイ(入口)となるという理論で、国内外の専門家間でも意見の分かれるものです。

大麻事件報道で不安になったCBDユーザーは…

それならいっそのこと来年から…

以前も書いた通り、このカンナビはいわゆるマリファナ解禁論者ではありませんが、過剰な大麻規制で医療用大麻やCBDが巻き添えを食っている現状には大きな疑問を感じています。

特にCBD製品の場合、多くの先進国では法的に許容範囲とされる微量の酩酊成分THCに対する潔癖主義的な規制を見るにつけ、「いや、物事にはちゃんと優先順位をつけて取り組もうよ」と思ってしまいます。

ちなみに個人的には大麻は立派なゲートウェイドラッグだと考えていますが、アルコールも立派なゲートウェイドラッグ。

タバコの場合は使用者本人や周囲への健康面での危険性は高いものの社会的な危険性は低いため、アルコールとも異なる認識や取り組みが必要ですが、日本が長らくその問題を放置して、形式的な対策や規制を優先してきたことは数年前に訪日したWHO視察団の手厳しい指摘からも明らかです。

結局のところ、財務省に配慮しつつ、健康面での危険性の話と犯罪面での危険性の話、つまり違法性という要素を巧みに(?)混ぜると、現在のような行政スタンスになってしまうのでしょう。

ということで、記事タイトルでは『提言』などとエラそうな言葉を使っていますが、カンナビ的なささやかな提案は次の見出しの通りです。

…アルコールなど『合法薬物』も含めたキャンペーンにすれば?

ついでに、厚労省が掲げる『危険性・有害性』の重要な要素の一つとして、『薬物依存』に関する説明を、厚労省が運営する健康情報サイトから引用しますが…

脳に直接作用して高揚感などをもたらす薬物に依存してしまう精神疾患。

薬物依存とは薬物の摂取で快感や高揚感を伴う刺激を体験した者が、それを再び求める抑えがたい欲求が生まれて、その刺激がないと不快な精神的・身体的症状を生じる状態のことをいいます。

覚醒剤や麻薬・向精神薬、大麻などによる依存のみではなく、広い意味では、シンナー・睡眠薬・抗不安薬など、さらに進んでアルコール(酒)やニコチン(たばこ)なども対象とすることがあります

依存の症状には精神依存と身体依存の二つに分けられます。
精神依存は強い欲求のためその薬物の使用を意志でコントロールできない状態のことで、ニコチン依存の人が煙草を吸えないとイライラするのがこの症状です。
身体依存は身体的異常(離脱症状)を生じる状態のことで、アルコール依存の人がアルコールが抜けて来ると手が震えてくるのがこの症状です。

出典:『薬物依存(やくぶついぞん)』(厚生労働省『 e-ヘルスネット』)

…この中ほどにある『さらに進んでアルコール(酒)やニコチン(たばこ)なども対象とすることがあります』という、一見、アルコール依存やニコチン依存は『薬物依存』の拡大解釈であるかのような書き方。

でも、それに続く依存症の症状を例示するのに使っているのはアルコールとニコチン。

読者にも分かりやすい身近な例ということで引き合いに出したのだと思いますが、名実ともに薬物依存の代表格なので当然といえば当然。

『広い意味では』とか『さらに進んで』などのような遠慮はいらないはずです。

ということで、薬物の『危険性・有害性』に関して、警察はさておき厚労省はまずは健康被害の観点から、アルコールもタバコも同列に並べてキャンペーンをしたらどうですか?…というのが、カンナビ的な提言…というか子犬の遠吠えです。

では、また!

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