【徹底解説】「CBDオイル等のCBD製品の輸入を検討されている方へ」(厚生労働省)【前編】
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こんにちは、 カンナビジオール (CBD) 情報局「カンナビの井戸」の「かんなび」です。
1週間ほど前になりますが、厚生労働省は「CBDオイル等のCBD製品の輸入を検討されている方へ」と題した文書を公開しました。
CBD製品の輸入販売が日本国内で急増していることや、このブログでも度々取り上げたエリクシノール社が一時販売停止する原因になった違法成分THCの含有問題などの影響もあるのでしょう。
エリクシノール販売再開! …と一部商品「提出」の話
厚労省はこれまで、個人・法人を問わず、CBD製品の輸入に興味のある人が参考にできるような整理された情報を公開していませんでした。
実際に輸入する人にとっては品物が日本の税関検査を受ける段階で発生する予想外のトラブルや混乱も多く、特に販売目的でCBD製品を輸入する事業者にとってはそのインパクトも大きかったため、今回このような文書が公表されたことは大きな前進です。
ということで、その内容を今回と次回の2回に分けて解説したいと思います。
では、早速1ページ目から見てみましょう。
【2020.6.4 追記】
本ブログ記事の掲載後、厚生労働省はリンク先のPDFファイルを一部内容の異なる更新版と差し替えましたが、本ブログ記事の内容に大きな影響はありません。
■「CBDオイル等のCBD製品の輸入を検討されている方へ」【P1】
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(旧リンク:https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000616263.pdf)
出典:「CBD(カンナビジオール)を含有する製品について」
(厚生労働省 地方厚生局 麻薬取締部)
【注意報】『円建て決済』海外CBD通販サイトにご注意!
「必ずお読みください」(P1)
まず、「必ずお読みください」の1点目と2点目は重要です。
この文書の趣旨はそのタイトルの通り、CBDオイルなどのCBD製品の輸入を「検討」している人のための事前相談に関する説明です。
この事前相談の際に提出する資料について、「実際に輸入を行う際、再度、税関又は厚生労働省に対し提出する必要が生じる場合があります」という予防線を張っている点からすると、一応この相談プロセスは、予備的で独立したステップ。
とはいえ、実際に輸入することになった場合にはそのプロセスの一環になる(その場合でも資料の再提出が必要となる可能性もある)という位置づけになっていることが分かります。
さて、実際に相談をする上で必要となる資料ですが、それは特に明記されていません。
【2020.7.13 追記】
その後、必要書類に関しては「下記3に記載の書類一式を添付して」という具体的な説明が追加されたため、以下、関連する段落を抹消します。
ただ、文書を読み進めると、2ページ目の最後に「輸入の都度、メールで提出してください」と記載されている「本番用」の資料をこの事前相談の段階でも実際に提出することを想定した内容になっていることが分かります。
つまり、2ページ目の最後に「CBD製品の輸入をする際には」として記載されている「以下の資料」(続く3~4ページ目に記載)は、その前段階となる「CBD製品の輸入を検討されている方が相談される際には」の段階で必要になるということになります。
正確には、そこまで資料を揃えず気軽に(?)相談してはいけないと書かれているわけではないのですが、相談に対する回答内容を「『大麻』に該当するか否かについての回答」としているため、輸入の際に必要になる資料と同一または同等のものがないと、厚労省としてもそれに見合ったレベルの回答を出すことができないはず。これまで厚労省にどのような相談が寄せられていたのかは分かりませんが、過去の質疑応答も踏まえてこのような方法を採ることにしたのでしょう。
ここは、「いざ輸入するとなれば結局取り寄せる必要のあるもの」を先に取り寄せて提出しておくことで、「事前相談の意義や精度を高めることができる」と前向きにとらえるのが良いでしょう。
もちろん、以前の記事で紹介したような、製品ラベルに違法成分THC(後述しますがこれは前述の大麻取締法では規制されていません)の含有が堂々と(?)記載されている商品であれば、相談時に製品ラベルの写真を提出するだけでも十分な判断材料になりますが、そのような製品は違法なので、そもそも相談するだけ無駄です。
また、製品ラベル上ではTHCを含まないとしている製品であっても、欧米の場合は産業用大麻(ヘンプ)の基準で設定されている上限以下の含有率であれば「THCを含んでいない」に含めてしまうことも多いため、結局のところ、この前置きの2点目に記載されている通り、事前相談の結果はどうであれ、「輸入の際の」税関・厚労省による検査や、その後の「国内における検査」が実施された場合にTHCが検出されると処罰を受ける可能性がありますよという話です。
この後者、「国内における検査」は輸入手続とは直結していませんが、以前このブログで紹介した「カンナビノイド審査委員会」がここで活躍するのかもしれません。
「カンナビノイド審査委員会」のCBD審査制度にちょっとツッコミ【前編】
ということで、通関の段階で没収されたり責任を問われたりするような経済的・法的なリスクを負うような購入・輸入手続を始める前に、具体的な相談をしておくことの意義はあります。
その相談機会をより意義あるものにするために必要となる資料手配の手間は後述の通り結構大変ですが、今回公開された情報により、「ダメもとで輸入しようとしたらやっぱダメだった」というような無駄な手間は多少なりとも省くことができるはず。
「問い合わせ先」(P1)
この「問い合わせ先」セクションに関してですが、1点目にあるメールで資料提出というのは良しとして、2点目では、回答となる確認結果の連絡が「お電話いたします」となっています。
これはちょっと驚きですが、日本の役所の場合、個別相談のような定型的ではない案件の場合には書面連絡を極力避けようとする傾向があるため仕方ないのでしょう。
ここは、口頭連絡ならではの質疑応答の機会として前向き(?)に。
3点目として記載されている「この手続は、輸入者が行ってください」という注意書きは単に、輸入当事者でないと話が噛み合わないなど非効率…ということではなく、厚労省としては必要とあらば相談段階の情報とも照合して輸入者を把握して記録に残すことができるようにしておこうという狙いもあるのでしょう。
これは当然といえば当然のことですが、現実的には、特殊な事情(?)を抱える輸入者の代理で別の人が事前相談をするケースも出てくることが予想されます。
「問い合わせ先」セクションの最後には、この問い合わせ窓口がこの2020年4月1日以降、それまでの本省の麻薬対策課から、「マトリ」の俗称で知られる麻薬取締部(関東信越厚生局)に移管されることが記載されています。
これに関してはいろいろ思い浮ぶこともありますが、主には本省側の負荷や現場側の経験値を照らし合わせた効率的で効果的な窓口運用のための変更だと思います。
では、続いて2ページ目を見てみましょう。
■「CBDオイル等のCBD製品の輸入を検討されている方へ」【P2】
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「1. 大麻の規制について」(P2)
ここには、「そもそも規制対象となっている大麻とは何ぞや」が分かりやすく書かれています。
そして違反した場合の罰則についても。
この白黒メインの文書の中で敢えてカラーの表を使っているところに、この文書の一番の狙いが表れているといったら言い過ぎでしょうか。
いずれにしても、それなりの萎縮効果はあるはず。
今回公表された窓口での相談や回答では、当然のことながら輸入しようとする製品が大麻取締法で定義する「大麻(たいま)」に該当するかどうかに焦点が絞られています。
この2ページ目の冒頭には、大麻取締法で定義する「大麻」に関するエッセンス(?)が記載されています。
【余談】
日本でも根強いファンがいるイギリスの自然派化粧品ブランド「ザ・ボディショップ(THE BODY SHOP)」では、「ヘンプシリーズ」という大麻由来のラインアップがあります。大麻由来といっても主に茎から抽出されるCBD成分を含むオイルではなく、ヘンプシード(産業用大麻の種子)から抽出されるオイルを使った製品です。
その日本語サイトの説明には「日本では大麻(オオアサ)と呼ばれるクワ科の植物」という記述があります。そう、「たいま」ではなく「おおあさ」です。
ちなみに、恐らく「たいま」と混同されるデメリットを避けるためだと思いますが、商品説明で「おおあさ」という読み仮名を添えた大麻由来の商品は他社でも出しています。大麻草自体は古来、日本も含め世界中で、大げさな言い方をすると人類の歴史に貢献してきた植物ですが、日本の場合、その名前の問題も含め、何とも残念な歴史があります。それについてはまた別の機会に書きたいと思います。
【決定版!】CBD選び方ガイド ~ カンナビ式CBD製品分類表 ~
「2. CBD製品について」(P2)
さて、話を戻して「CBD製品について」です。
このセクションも、そもそも分かりにくい法規制が存在することを踏まえると、それと照らし合わせてどのようなCBD製品が問題なのか、比較的分かりやすく書かれています。
「分かりにくい法規制」というのは、化学合成されたTHCはこのP2にも書かれている通り麻薬として明確に規制されているので良いのですが、規制対象外の天然THCしか含まれていないCBD製品の場合でも、(天然THCであることが確認できないため)「大麻に該当しないことが確認できない」というロジックで運用・規制されている点です。
これは厚労省文書の説明文が分かりにくいという次元の話ではなく、複数の法律がパッチワーク状にカバーする範囲に実は隙間があり、それを拡大解釈する運用に無理がある(他方、海外では大麻草の品種改良や多様化が進んでいることでその隙間がどんどん広がっている)…という、より根本的な話です。
なお、輸入しようとするCBD製品に含まれるCBD成分に関しても、「化学的に合成されたCBD」なのかどうかによって事前相談や輸入手続の際に必要となる書類が異なるため、この文書ではそれを3ページ目と4ページ目に分けて個別に説明しています。
海外CBD製品の輸入販売…とリスク ~ カンナビ質問箱より ~
「3. CBD製品の輸入にあたって」(P2)
さて、ここでCBD製品を輸入する際に必要となる資料に関する説明が登場するのですが、前述の通り、これは検討段階で相談する際に実質的には必要となる資料の話です。
ということで、前編となる今回はここまでにしておきますが、この全4ページの文書の残る2ページはご参考まで、以下に掲載しておきます。
ちなみに、今回の文書は厚労省の公式ウェブサイト内に設けられている「薬物乱用防止に関する情報」というセクションに掲載されているのですが、そこに公開されている情報は、大麻に限らず違法薬物に関する厚労省のスタンスや取り組みを理解する上で参考になります。
では、また近々「後編」で!
【徹底図解】正規輸入、並行輸入、個人輸入!…を意識したCBD商品選び
【徹底解説】「CBDオイル等のCBD製品の輸入を検討されている方へ」(厚生労働省)【後編】
■「CBDオイル等のCBD製品の輸入を検討されている方へ」【P3】
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■「CBDオイル等のCBD製品の輸入を検討されている方へ」【P4】
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(旧リンク:https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000616263.pdf)
出典:「CBD(カンナビジオール)を含有する製品について」
(厚生労働省 地方厚生局 麻薬取締部)
厚労省『麻薬・覚醒剤乱用防止運動』への提言!…というかツッコミ
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わかりやすい記事でとても参考になりました。
これは厚生労働省へ提出しなければいけないというより、一度確認したほうが安全に輸入できるよという位置付けの行為だと認識してますが、実際に各業者様は厚労省へ書類を毎回提出しているのでしょうか?
(メール返信文を転載)
CBD情報サイト「カンナビの井戸」の「かんなび」です。
サイトへのコメントをありがとうございます。
サイト上で返信しますと、頂いたコメントと併せてお名前が自動的に掲載されてしまうため、メールにて返信させていただきます。
まず、ご認識の通り、厚労省への事前確認自体は個人・業者を問わず必須ではありません。
厚労省としては、「一度確認したほうが安全に輸入できるよ」(あるいは『輸入不可なものは事前に確認できるから無駄が省けるよ』)というのは恐らく建前で、本音としては「これだけ面倒なのだから輸入しようと考えないで(少なくとも安易には)」だと思います。
以前は具体的なルール等を明文化・公表しないことで、ケースバイケースで一貫性のない(良く言えば臨機応変な)対応を省単独でも税関との連携においても具合良くしていた印象ですが、昨今のCBDブームから、輸入トラブルや問い合わせのための個別対応の負荷というデメリットが上回ってきたのかもしれません。
さて、ご質問の件ですが、業者(輸入販売業者)の場合、実際に輸入する段階では「毎回提出している」はずです(同一製品の2回目以降の輸入の場合、以前は一部の書類を省くことができたようですが今後は不明です)。
ただ一般的な話として、少量(申告額が少額)の場合は個人使用目的ではなく販売目的でも小口輸入で税関をすり抜けることは多いため、正規の輸入手続を踏んだ上で却下された商品が他店では販売されていることを指摘する業者もいます。
逆に、小口に限りませんが、税関で止められたり没収されるケースはそれ以上に多いかもしれません(税関の目に留まりやすい伝票や送り状が添付・同梱されている場合、輸入目的に疑いが生じた場合、必要書類を製造元等から調達できない場合、検査に回され違法成分THCが検出された場合、等)。
ちなみに輸入業者の場合は、継続的な卸売や小売のため商品を安定的・継続的に輸入できることは重要ですので、今回、必要書類や事前相談プロセスが明文化・公表されたことで、今後は業者(特に新規参入の場合)の混乱や無駄手間は減るのではないかと思います(少量であればイチかバチかで個人輸入を試みる個人や小規模事業者は減らないとも思いますが)。
一般的な情報ですが以下もご参考下さい。
少額輸入貨物の簡易通関扱い(カスタムスアンサー)
https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1002_jr.htm
個人輸入とは(カスタムスアンサー)
https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/kojin/3001_jr.htm
小口輸入と個人輸入の違い(MIPRO)
https://www.mipro.or.jp/Import/qanda/basic/q03.html
なお、本メールアドレスは送信専用として使用しているため受信メールを確認しておりません。
追加で何かありましたら、お手数ですが改めてサイトの方でコメントをお願いします。
(その場合、基本的にサイト上でコメント返信しますので必要に応じてニックネーム等をご使用下さい)
—
かんなび
http://cbd-lover.info/
こんにちは。メールにてコメントへの返信をいただいた者です。ご丁寧に対応していただきありがとうございました。
さらに質問がありコメントさせていただきます。
厚生労働省へ輸入可否を確認する際に提出する書類は、海外メーカーへ発注を済ませてからメーカーから入手するのが普通だと思います。そのため手続きの流れとしては、
1.メーカーへ発注をかける。
2.メーカーへ依頼し必要書類のデータを送付してもらう。
3.必要書類を厚生労働省へ提出し、輸入上の安全性について確認してもらう。
4.輸入上問題ないと確認できたらメーカーへ入金し、発送処理を依頼する。
5.日本で製品を受け取る。
という流れという認識であってますでしょうか。
再コメントをありがとうございます。
ご質問の件、確度の最も高い理想的な進め方としては、仰る1.~5.の流れの通りだと思います。
ただ、この手続を踏むとなると「事前」相談レベルには留まらない負荷や負担が輸入「検討」者側にかかる可能性が高い一方で、厚労省の案内文書P1「必ずお読みください」にある通り、いざ実際に輸入(通関)する段階になって税関で(あるいは無事通関し国内販売を開始したのちに厚労省や協力機関の調査等により)違法とされるリスクは残ります。
もう少し詳しい説明は近々フォロー記事として書こうかとも思い立ちましたが、一言で言うと、厚労省は、このブログでもたびたび取り上げているエリクシノール社の事例を受け、「製造元・輸出者側の書類や検査結果は信用できない」という姿勢になっていると推測します(今回の案内やカンナビノイド審査委員会のCBD審査制度の記事で書いたような連携など動きから)。
そうなると、事前相談の段階でどこまで負荷・負担をかけるのか、輸入検討者側でも検討・判断が必要になると思います。
特に小ロットの発注の場合、厚労省が必須とする「ロット番号等輸入する製品が特定できる番号」と一致する成分分析書の商品ロットを、実際に購入してくれるのか不確実な日本からの注文のために取り置く可能性は低いと思います。(メーカー側にしてみるとロットやバッチ番号は一致しないとしても成分分析書はウェブサイトで公開しているので『仮に輸入ロットもそれ通りだったとしたら』無事通関できるのか先に厚労省に確認してくれと言う状況)
これが、ロットの大きい発注や継続的な発注・代理店契約等の場合はメーカー側との取引条件の一環として交渉次第だと思いますが、安全な進め方を想定されてのご質問とお察ししますので小ロットでの輸入を想定して返信しています。
ご丁寧に返信していただきありがとうございます。
具体的で大変勉強になりました。
今後も記事の更新楽しみにしております!
横から失礼いたします。
大変詳しい内容でとても勉強になります。ありがとうございます。
この内容に関連しての質問ですが、
個人事業主としてCBD商品の輸入販売をしたい場合、初めは小口になると考えていますが、厚生労働省の手続き通りしたとしてもエルクシオール社の事例のように、違法になるリスクがあるということですね・・
そのリスクを回避する何か方法はありますか?
NNNさま
コメントをありがとうございます。
ご質問の件、どのようなリスクをどの段階でどれくらい回避したいと考えるかにもよると思いますが、仰るように「厚生労働省の手続き通りした」(必要書類を揃えて事前相談はクリアした)としてもまだ残るリスクは、次ステップとなる実際の輸入段階で税関の通関審査をクリアできれば多少なりともさらに軽減できるはずです。
その税関でも「スルー」してしまい(最近はさらにチェックが厳しくなりその可能性は下がっているはずですが)国内販売開始後に発覚してしまうような問題に関するリスクをさらに潰そうとするなら、THC含有リスクについては以下の追加ステップが考えられます。
1) 着荷後、販売主体として改めて成分分析(THC検査だけでも)を委託して問題がないことを再確認。
2) その結果を、海外メーカー側の分析書(含有カンナビノイド類や残留重金属などのフル検査結果)と併せて公表して販売開始。
が、小口の輸入販売となるとこれはあまり現実的ではないのと、厳密には、これでクリアできるのは『THC含有リスク』だけです。
THCさえ検出されなければ、その製品は大麻取締法上の『大麻』に該当する疑いがあると追及を受ける可能性は低いため、THC含有リスクさえ回避できれば良いという考え方もあります。
(THC含有そのものは同法で規制していないため、厚労省としては、THCが含まれていることを確認→合成THCなら麻向法違反、天然THCなら大麻取締法の規制対象から除外される『成熟した茎と種子及びその製品』には該当しない可能性があるため大麻取締法違反の可能性あり…というロジック)
ただ、エリクシノール社の場合、昨年10月に親会社側が出したプレスリリースの内容が事実だとすると、事の発端はTHC含有ではなく、『成熟した茎と種子』以外の部位を使用したグローバル製品を子会社が販売していると親会社側が自発的に(?)問題化させたことです。
https://cbd-lover.info/?p=77
つまり、この『成熟した茎と種子(以外)リスク』についてもどこまで敏感になるかによっては、THC含有の可能性だけでなくこれもご質問の「違法になるリスク」として関わってきます。
とはいえ、現実的には、日本の販売代理店に卸している製品について海外メーカーがわざわざ「実はあの製品には成熟した茎と種子以外の部位が使用されていた」と事後に公表する可能性は低く、どちらかといえばメーカーとしては、厚労省が必要とする書類である『➀証明書』や『➂写真』の提供を商談段階で、(a) 事実とは異なるという理由で拒否する、あるいは、(b)(事実はどうであれ小ロット案件の場合は特に)その手間を嫌って「とりあえず拒否する」…可能性の方が高いのでは?と思います。
このように考えると、この記事で解説した厚労省の事前相談の段階においては、必要書類の中でも、『➁成分分析書』(疑問が残るなら輸入段階になってから税関で分析すれば良い)よりも『➀証明書』と『➂写真』の(信憑性の)方が厚労省にとっては重要とも言えます(『THC含有』よりも『成熟した茎と種子』で輸入販売業者を牽制したり将来的に追及できる材料を入手しておく方が効率的かつ効果的という発想)。
同様に、厚労省や税関としては、➀や➂に関して、相談者や輸入者に対して(つまり海外メーカーにとっても)面倒な要求をすればするほど、問題のある製品が国内で流通することへのリスク対策にもなります(万一そのような製品をスルーしてしまったことが発覚した場合の保身策にも)。
ちなみに、大麻草の部位に対する規制(大麻取締法)と合成THCに対する規制(麻向法)がこの数年内に法改正によって撤廃される可能性はとても低いと思いますが、法改正までせず運用面で(数年前までのように)微量のTHC含有・残留について実質緩和する可能性は、今後数年以内でもあるのではと考えています。
ただ厚労省としては、一度振り上げた拳をただ下げる(以前のように微量THCは黙認状態に戻す)ことは市場秩序や信頼・面子の面でも具合悪いため、欧米と同様、0.2~0.3%以下のTHC含有が許容できる(危険ではないとする)ような大義名分や節目が具合良く巡ってくるまでは現状は変わらないかもしれません。
そのカギとなるのは国内外の医療大麻を巡る情勢や海外の産業大麻業界動向だと思います。
いずれにしても、大麻草の部位に対する規制(大麻取締法)と合成THCに対する規制(麻向法)を、現状のように巧みに(?)組み合わせて、エリクシノール社のケースのように、天然THCが検出された製品であっても厚労省は「大麻取締法上の『大麻』に該当する疑いがある製品」という苦しい説明しかできない状況はあまり長続きしない…というのがカンナビ的楽観論です。
以下の記事はその参考になると思います。
https://www.bci.co.jp/nichiryu/serial/2650
とはいえ、それまでの間は、最近はやりのCBDアイソレートや合成CBDのバルク輸入販売や、それらを使用した国内製造オリジナルブランド商品展開という、今の日本でリスク面も含めると経済合理性の高い選択肢を選ぶプレーヤーでさらに賑わっていくと思います。
以上、長々と回答しましたが、事業化の検討を進める上では、冒頭にも書いた「どのようなリスクをどの段階でどれくらい回避したいと考えるか」の「リスク」を細分化して整理した上で、各リスクをご自身の許容範囲に留める選択を進めることが重要だと思います。